新型コロナウイルスの感染が少し落ち着き、緊急事態宣言の解除、移動自粛の緩和と、徐々に社会や経済を元に戻す動きが出てきています。第二波が懸念されていますが、もはや感染が「終息」することはないでしょうから、第二波を防ぐのではなく、当然来る第二波に対応できるように備えることが大事かと思います。

日本人の持つレジリエンスを信じて

 いわゆる「コロナ禍」に対して、国も企業も個人も、緊急避難的な対応を取らざるを得ませんでした。国や自治体はコロナ対策として巨額の予算を組み、企業は情報セキュリティや生産性に目を瞑ってリモートワークなどに取り組み、個人は旅行はもちろん外食も控えて家に引きこもりました。
 突然訪れた大きな危機に対して、これを乗り越えることを最優先に緊急措置を取るのは当然です。コロナ対策の公的支援によって救われた企業や個人も多かったですし、医療関係者の皆様の多大なご苦労と個々人の自粛によって世界に注目されるほどの感染封じ込めができました。物心共に大きな犠牲を払いながらも、緊急事態だからと耐え忍び、危機を乗り越えてきました。
 しかし、緊急措置は一時的な緊急事態だからこそ取れることであり、いつまでも続けられないことも確かです。国や地方自治体は大きな債務を抱えましたし、緊急融資を受けて借金を背負った企業も多いでしょう。旅行や外出の自粛によって、宿泊業や飲食業は危機的状況になっています。学校の休校で子供の勉強が遅れたり、外出できずに情緒不安定になったり、在宅勤務によって「コロナDV」と呼ばれる事態まで発生しています。わずか数カ月で、この状況です。これを続けると、社会も経済も持たないことは明白です。

 これから、緊急時の体制から通常の体制へ戻していくフェーズになるでしょう。しかし、元通りには戻らない、という点は多くの意見が一致するところです。新型コロナウイルスについて謎が多かった当初は、安全策をとって極端な対応を取らざるを得なかったでしょうが、これからは不便と安全のバランスを取りながら、「ウィズコロナ」「ニューノーマル」を探っていくことになります。

 時代ごとに流行する、社会や経営の小難しい横文字のキーワードがあります。ダイバーシティやサスティナビリティなどがありますが、数年前から「レジリエンス(復元力)」という言葉を聞くようになりました。元々は精神的な打たれ強さ、のような意味の心理学用語だそうですが、今では社会や組織が「変化に対応し、素早く復元する力」といった意味合いで使われています。
 コロナ禍で多くの犠牲を払いましたが、一方で、普及が進まなかったリモートワークが一気に進み、利便性と限界を実感する機会にもなりました。他にも多くのコロナ対策の副産物があったと思います。元には戻らないのであれば、ウィズコロナ時代に対応した社会や組織を作り上げるという、レジリエンスがこれから問われるのでしょう。

 日本人はレジリエンスが低い(恐らく心理学的な意味で)と言われているそうですが、西暦680年頃に建立された法隆寺の五重の塔は、地震に対抗するのではなく柳のように受け流すというレジリエンス発想の建造物です。1300年以上前にこの発想をした日本人には、きっと高いレジリエンスがあると信じています。

 

【長崎オフィス 所長・社員税理士 内田 佳伯】
【『月刊 アップ長崎・島原』2020年7月号 所長巻頭言より】


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