今年はコロナウイルスの影響により、例年11月に実施されていた年末調整説明会が全国的に中止となりましたが、税制改正により今年の年末調整は大きく変更されています。
 今回はその概要をまとめました。

 

 [1] 給与所得控除
 後述する基礎控除の改正に伴い、給与所得控除が一律10万円引下げられています。また、税制調査会の「高年収サラリーマンの控除が過大」との見解を受けて、昨年は年収1,000万円が上限ラインとされていましたが、今年は850万円に引き下げられています。

 [2] 基礎控除
 一律10万円引き上げられることとなりました。但し、合計所得2,400万円超から3 段階で縮小され、2,500万円超で控除は「0」となります。政府の「働き方改革」促進の観点から個人事業者の拡大が目的とされています。合計所得2,500万円超の場合、給与所得控除25万円、基礎控除38万円の合計63万円が控除減となり、税率50%(国税40%、地方税10%)の納税者は年30万円超の増税(除復興特別所得税)となります。

 [3] 所得金額調整控除
 給与所得控除の見直しに伴い、給与年収850万円超の場合は増税となりますが、この年収世帯の多くが子育て、介護世帯と考えられることに配慮し、一定の要件に該当する場合は給与所得控除の増額調整が行われます。

(1) 要件
   給与収入が850万円を超える居住者で下記のいずれかに該当する者
   自身が特別障害者
     年齢23歳未満の扶養親族を有する者
    特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する者

(2) 所得金額調整控除額
   下記の算式により計算した金額を給与所得の金額から控除する
(給与収入(1,000万円上限) –  850万円)× 10% = 所得金額調整控除額

 [4] 各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等
 同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生控の合計所得金額要件がそれぞれ10万円引き上げられました。

 [5] ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除
 昨今の「未婚のひとり親」が増加している現状に対応すべく「ひとり親控除」が創設されました(性別不問)。

 (1) 対象者 
 婚姻をしていない者又は配偶者の生死が明らかでない者で以下の要件に該当する者
 イ 総所得金額等の合計額が48万円以下の同一生計の子を有すること
 ロ 本人の合計所得金額が500万円以下であること
 ハ 住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと

 (2) 控除額
 総所得金額等から所得税35万円(住民税30万円)を控除
 なお、「ひとり親控除」に該当する場合は、源泉徴収簿の「扶養控除等の申告」欄やその欄外の余白などに「ひとり親」と記載します。

 また、「ひとり親控除」の創設に伴い、寡婦(寡夫)控除について見直しが行われました。
 (1) 寡夫控除は廃止(「ひとり親控除」に吸収)
 (2)「ひとり親控除」に該当せず、以下の要件を満たす女性について寡婦控除を適用
  イ 夫と死別、離婚、生死不明の状態であること(離婚の場合は扶養親族を有する)
  ロ 本人の合計所得金額が500万円以下であること
  ハ 住民票に事実婚である旨の記載がされた者がいないこと

 なお、控除額は所得税27万円(住民税26万円)で改正ありません。

 

【改正前後の控除に係る適用判定のフロー図】

(注)改正前の「寡婦(特別な寡婦を除く)」に該当する人が、上記適用判定の結果、「寡婦」に該当する場合において、その人と生計を一にする子を有するときは、「ひとり親」(控除額:35万円)に該当し、年末調整の際にその異動内容について申告する必要があります。

 

 今回の改正で、「給与所得者の基礎控除申告書」と、「所得金額調整控除申告書」が加わることになりました。この2種類の新しい申告書は、従前の「給与所得者の配偶者控除等申告書」と集約され、①「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という何とも長い名称の様式になっています。
 つまり、今年は①と、従前の②令和3年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、③令和2年分給与所得者の保険料控除申告書の3種類を提出することになります。記載要領等は紙面の都合で割愛しますが、ご不明な点は担当者にお尋ねいただくか、または国税庁ホームページをご参照ください。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2020/pdf/04-09.pdf

 

【島原オフィス 所長 兼 長崎オフィス 税務相談室 室長 内田尚生】
【『月刊 アップ長崎・島原』2020年11月号】


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