皆さん、こんにちは。相続手続き支援センターです。今回は2020年7月10日から施行されました「法務局による自筆証書遺言の保管制度」の要点についてご説明させていただきます。2019年は約40年ぶりに相続法に関して大改正が行われました。今回取り上げる「法務局による自筆証書遺言の保管制度」もその大改正のひとつです。

 約40年前と今を比較すると、年間死亡者数は約70万人から約130万人に増加。そして平均寿命は男性73歳から81歳に、女性79歳から87歳に伸び、日本は超高齢化社会・大相続時代に突入しています。昨年の相続法の大改正も高齢化した相続人の生活を守る、あるいは遺族による「争族」を防ぐといった視点での改正内容が並びました。2019年1月の自筆証書遺言の形式改正(自筆遺言の財産目録がパソコンで作成可能になった)を皮切りに「被相続人の預貯金仮払い制度」(遺産分割前に被相続人の預貯金の一部を引き出すことが可能になった)、「配偶者居住権の新設」(配偶者の自宅に住み続ける権利を守る)等々、次々とその施行を迎えてきましたが、今回の「法務局による自筆証書遺言の保管制度」が昨年の相続法大改正の最後の項目となります。内容はシンプルで読んで字のごとく「自分で書いた遺言書を、自宅などではなく、法務局で保管してもらえる」(2020年7月10日スタート)という制度です。

 自筆証書遺言それ自体が大きく変化したわけではなく、その自筆証書遺言の弱点の一部を補ってくれるようになるという位置づけになります。つまり「どこに保管されているのか分からない」「故意に破棄されたり、改ざんされたりする恐れがある」「被災により破損してしまう」などの弱点部分を、法務局で保管することによって解消できるというわけです。

 保管制度を利用する場合は、作成した自筆証書遺言(形式を守り、封はしない)を本人(代理人は認められない)が法務局へ持参して申請を行います。保管申請の手数料は3,900円です。遺言書は原本と画像データが保管されます。一度保管された遺言書・画像データはいつでも閲覧可能です。(遺言書原本の閲覧1回1,700円画像データの閲覧1回1,400円)
 今回の保管制度発足で弱点の一部は解消され、自筆証書遺言が作成しやすくなりました。しかし、懸念もあります。法務局では自筆証書遺言の形式面のチェックはされるため、相続発生後の自筆証書遺言の検認手続きは省略が可能となるものの、金融機関や証券会社で公正証書遺言(公証役場で作成した遺言書)と同じようにスムーズに相続手続きができるかどうかはかなり微妙です。また、遺言内容のアドバイスが貰えるわけではありませんので、相続で紛争が予測される場合に遺言内容の不備や欠落があれば、さらに問題が複雑化する可能性もあります。
 意図したとおりの効果を生じさせることのできる確実な遺言書を遺すためには、専門家に相談したうえで作成し、公正証書遺言で遺しましょう。

 

【(一社)相続手続支援センター センター長 兼 (一社)昇継 上級アドバイザー】
【税理士法人アップパートナーズ 長崎オフィス 課長 貞松 威穂 】
【『月刊 アップ長崎・島原』2020年7月号】


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