昨年12月、令和2年度税制改正大綱が閣議決定されました。
 人口減少と少子高齢化が進む中で人生100年時代に相応しい諸制度への転換、事業革新に繋がるイノベーションを生み出すベンチャー企業への投資促進がポイントです。公的年金はあてにせず自身で老後資金の手当てを、成長・発展が見込める企業には研究資金を投資してください、という国のメッセージが読み取れます。
 今月から分野別にシリーズでお届けします。今回は個人所得課税/消費課税編です。

1.NISA 制度の見直し、延長
 人生100年時代を迎え、高齢者の就労拡大や働き方の多様化に対応し、私的年金の加入年齢引上げ、企業年金の普及拡大、家計の安定的な資産形成を促進する観点から、つみたてNISAは5年延長、一般NISAは2024年から2階建ての制度に見直して5年延長されます。なお、利用実績の乏しいジュニアNISAは延長せず2023年末で終了です。

(備考)「ジュニアNISA」は延長せずに、現行法の規定どおり2023年末で終了。
(注)レバレッジを効かせている投資信託、及び上場株式のうち整理銘柄・監理銘柄を投資対象から除外。

 

(出典:金融庁資料)

2.住宅ローン控除の適用要件の見直し
 新規住宅に居住した年から3年目に従前住宅等を譲渡した場合においても、以下の特例を適用する場合は、住宅ローン控除の適用が受けられないことになりました。令和2年4月以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用されます。
 ・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
 ・居住用財産の譲渡所得の特別控除
 ・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例など
 これらの特例を受けた場合、既に適用した住宅ローン控除は遡及して適用できないこととなり、過去の申告について修正申告が必要となります。

3.国立大学法人等に対する個人寄付の促進
 寄附収入がイノベーティブな研究に挑戦する若手研究者への研究費助成事業等に充てられる場合には、税額控除を選択できるようになります。

4.未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し
 経済社会の構造変化を踏まえ、全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制実現のため、令和2年分の所得税から以下の見直しが行われます。
 (1) 未婚のひとり親に寡婦(夫)控除を適用
 (2) 寡婦(夫)控除について、以下のとおり見直し
 ・寡婦に寡夫と同等の所得制限(所得500万円(給与年収約678万円))を設ける
 ・住民票の続柄に「夫(未届)」、「妻(未届)」の記載がある者(事実婚)は対象外
 ・子ありの寡夫の控除額を子ありの寡婦と同額にする(所得税27⇒35万円、個人住民税26⇒30万円)

5.企業年金・個人年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置
確定拠出年金法等の改正を前提に、以下の項目について所要の措置が講じられます。
 (1)DC(企業型・個人型)の加入可能要件の見直しと受給開始時期等の選択肢の拡大
 ・企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入可能年齢の見直し
 【現行】厚生年金被保険者のうち65歳未満のもの⇒【見直し案】厚生年金被保険者(70歳未満)
 ・個人型確定拠出年金(個人型DC(iDeCo))の加入可能年齢の見直し
 【現行】国民年金被保険者のうち60歳未満のもの
 ⇒ 【見直し案】国民年金被保険者 ①第1号被保険者:60歳未満
                  ②第2号被保険者:65歳未満
                  ③第3号被保険者:60歳未満
                  ④任意加入被保険者:保険料納付済期間等が480月未満の者は任意加入が可能(65歳未満)
 ・確定拠出年金(企業型DC・個人型DC(iDeCo))の受給開始時期の選択肢の拡大
 【現行】60歳から70歳の間で個人が選択可能⇒【見直し案】公的年金の見直しに併せて上限年齢を引上げ(75歳)
 ・確定給付企業年金(DB)の支給開始時期の設定可能範囲の拡大
 【現行】60歳から65歳の間で企業が設定可能⇒【見直し案】柔軟な制度運営を可能とするため設定可能範囲を70歳に拡大
 (2) 中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲の拡大
 【現行】100人以下⇒【見直し案】300人以下
 (3) 企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和
 ・企業型DC加入者がiDeCoに加入できるのは、現行は労使合意に基づく規約の定めがある企業に限られているが、これを改め、iDeCoに加入できるように改善を図る。

(出典:厚生労働省資料)

6.居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し
 住宅として貸付を行う建物の取得費に係る消費税は本来課税仕入にはできませんが、意図的に他の事業で課税売上割合を増加させることで当該取得費の全部または一部を仕入税額控除(消費税計算上の経費)とする行為が指摘されていました。そこで、令和2年4月以後に行われる貸付から一定の居住用賃貸建物(注)について、取得時の仕入税額控除を認めないことになりました。
 一方、当該建物を取得した課税期間の初日から3年内に事業用貸付及び譲渡に転用した場合は、貸付や譲渡の額を対価の基礎として調整を行います。

 (注)居住用賃貸建物…住宅の貸付でないことが明らかな建物以外の建物であり、かつ、対価が1千万円(税抜)以上であること

 法人税の税率は軽減傾向ですが、その反面所得税は課税強化、特にいわゆる富裕層はここ数年で給与所得控除の縮小、人的控除の縮小廃止で著しい増加傾向にあります。自己の資産形成と節税をバランスよく組み合わせることが肝要です。当グループにはCFP(日本FP協会認定、1級プランナー)も在籍しております。ご興味のある方はお気軽に担当者までお尋ねください。

 

【島原オフィス 所長 兼 長崎オフィス 税務相談室 室長 内田尚生】
【『月刊 アップ長崎・島原』2020年2月号】


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