以前ある施設をお訪ねしたときのことです。浴室に移動する職員さんが、「〇〇ちゃん、お風呂に行くよ~」と利用者を「ちゃん」付けで呼んでいる声が聞こえました。利用者には聞こえていないようでしたが、第三者としてその場面を見た私は、あまりいい気持ちではありませんでした。また、「もしも身内に介護が必要になったとき、この施設さんにはお願いしたくないな…」と思いました。

皆様の周りでは利用者の呼び方は、適切でしょうか?おかしな呼び方はないでしょうか?
ここで、人の呼び方について、OKパターン・NGパターンをみていきましょう。

思いやりの接遇⑥「“呼称” ひとつぶ…?」

①介護事業所等での利用者(家族)の呼び方

OK:名字+さん、またはご本人希望される呼び方をあらかじめ確認してからお呼びする
NG:「おじいちゃん」「おばあちゃん」「〇〇ちゃん」「〇〇っち(←もう常識感覚の問題?学校の同級生じゃないんだから…。)」

もし、「ちゃん」付けをされた利用者の家族がたまたま来所して、この職員の呼び方を聞いたら、どんな思いをするでしょうか…。呼び方には相手との関係性や意識が表れます。また、特に介護・医療には尊厳が欠かせないものだと思います。相手への尊敬心が伝わる呼び方を心掛けていただきたいものです。以前聞いた話ですが、ある介護職員の方が利用者に「おじいちゃん、〇〇しましょうね~」と声を掛けたところ、「わしはお前のおじいちゃんではない!!名前を持っとる!!」と怒られたことがあったそうです。中にはそう受け取られる方もいらっしゃいます。お一人お一人が個性とお名前をお持ちです。おじいちゃんとひとくくりにするのではなく、親しみを込めて名前をお呼びする方がいいでしょう。

②職場外の人に職員のことを話す場合

OK:敬称を付けず名字のみ、役職名のみ、役職名(職名)+名字(例:「山田は~」、「施設長の山田は~」)
NG:名字+役職名(例:「山田施設長は~」)

電話応対の際、「山田施設長は今いません」という言葉が返ってくることがあります。電話なので緊張をして、とっさに常日頃の呼び方が出てしまったのかもしれません。しかし、「組織外の方々に対しては自組織を自分と同様に見立てて謙遜する」という考え方から、部外者に職員のことを話す時はたとえ上司のことであっても謙譲表現にしなければなりません。

自分自身も含め周りの方の呼び方をぜひ聞いてみてください。特に利用者に対して知らず知らずのうちに、「ちゃん」付けになっているかもしれません。
「こしょう一粒は黄金一粒」とは、大航海時代の言(げん)…呼び方に表れる人柄、そして日々培われる信頼感は万金にも値するものでしょう。胡椒一振り「…ハ・ハ・ハクション!!」? おあとがよろしいようで…。

(接遇インストラクター 小関彰恵(社会福祉士・介護福祉士) 『月刊 アップ長崎』2016年7月号)