こんにちは! 春が到来し、過ごしやすい気候になってきましたが、花粉に弱い私には少々大変な季節でもあり、嬉しさ半分というところです…。

今月は平成29年度税制改正のうち、法人税に係る点について、お伝えいたします。

 

1.基本的考え方

税制改正は政府の方針に影響されます。政府の関心は何よりも『経済好循環』です。ITを活用したイノベーション(技術革新)による企業収益の拡大を促し、雇用増加や賃金上昇、企業の投資活動の活性化によって、消費や投資の増加につなげていく、というのがアベノミクスの描く経済好循環実現へのストーリーです。そこで本年度の改正でも、企業経営者に投資や雇用と賃上げ、研究開発などへの取り組みを促す趣旨の税制が設けられています。

 具体的には、『研究開発税制』『所得拡大促進税制』『中小企業向け設備投資税制』、これら3本が大きな柱です。

 

2.研究開発税制の見直し【平成29年4月1日開始事業年度~】

 本制度は、研究開発活動を行った企業に対して、その活動負担の一部を税額控除という形で軽減することを趣旨としています。今回の改正では主に以下の見直しが行われています。

 

①研究開発の範囲の見直し

新たなサービス開発に係る試験研究も含むように、拡充されました。例えば、ドローン技術を活用した自然災害予測サービス、農作業情報を収集・分析する農業支援サービス、ウェアラブルデバイス(着用式端末…スマートフォンと連携可能な腕時計など)による健康維持情報の収集・分析などが示されています。

②「増加型」の廃止と「総額型」への統合

研究開発費が過去3事業年度の平均コストより増加した場合に税額控除が認められていた「増加型」が期限切れ廃止となりましたが、従来の「総額型」(研究開発費総額の一定割合を税額控除として認める制度)への上乗せ措置として統合されました。

3.『所得拡大促進税制』の見直し【平成29年4月1日開始事業年度~】

 賃金増加や雇用推進を行った企業に対して、人件費の実質的な負担軽減を狙いとした税制です。具体的には、以下の3要件をクリアできた場合には、基準事業年度(平成24年度)より増加した給与等支給額の10%を税額控除として認めています。

要件① 給与支給額が、基準事業年度より3%以上(大企業は5%以上)増加

要件② 給与等支給総額が、前事業年度以上に増加

要件③ 平均給与等支給額が、前事業年度をえて増加(1円でも上回ればOK)

今回、要件③が以下のように改正されました。

 

[改正要件③]平均給与等支給額が、前事業年度より2%以上増加(2%アップ基準)

 不達成の場合→大企業:税制適用不可/中小企業:1円以上で適用可

 達成した場合→大企業:前年度からの給与等増加額について税額控除2%上乗せ/中小企業:前年度からの増加額について税額控除12%上乗せ

4.中小企業向けの投資促進税制関連の改組と延長

 中小企業に係る投資促進税制では、近年大いに活用された生産性向上設備投資促進税制が29年3月末で期限切れとなりました。これに代わって、中小企業投資促進税制への上乗せ措置として、「中小企業経営強化税制」が創設されたことが大きな改正点です。

 

(1)商業サービス業等活性化税制の2年間延長【~平成31年3月31日】

商業やサービス業を営む中小企業者が経営改善設備を取得した場合、「取得価額×30%特別償却」または「取得価額×7%税額控除」を受けられる制度です。

対象資産は、単品60万円以上の建物付属設備及び単品30万円以上の器具備品です。例えば、レジやショーケース、看板の新調、空調設備や店舗内装の工事などが挙げられます。

 

(2)中小企業投資促進税制の2年延長と対象資産の縮減【~平成31年3月31日】

本税制は、中小企業の投資に係る税制優遇で最もメジャーな制度です。今回の改正で2年間延長にはなったものの、器具備品が対象から外されてしまいました。

その他は従来通り資産の「取得価額×30%特別償却」または「取得価額×7%税額控除」を受けられます。

 

(3)中小企業経営強化税制の創設

 (2)の上乗せ措置として創設された税制、今改正の目玉の一つです。その概要は生産性向上設備投資促進税制に類似しています。主な内容は下記の通りです。

 

①上乗せ措置:即時償却または税額控除7%(特定中小企業は10%)

②対象資産:機械装置、工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェアと、建物と車両以外はほとんど対象とされています。下記のA類型・B類型とも、以前の生産性向上設備投資促進税制と同様に証明書(確認書)が必要です。また、最大のポイントとして、いずれの類型でも経営力向上計画の認定が要件とされていることに注意です。

・「生産性向上設備(A類型)」→生産性が旧モデル比年平均1%以上改善する設備

 要件確認のため、メーカーを通じて工業会等の証明書を受けることが必要です。

・「収益力強化設備(B類型)」→投資収益率5%以上の投資計画に係る設備

  要件確認のため、経済産業局に確認書の発行申請が必要です。

 

いずれも経営力向上計画の認定が不可欠であり、特にB類型の場合には経済産業局への申請と税理士又は公認会計士による投資計画案の内容確認との2つの手続きを要しますので、いっそう早めの準備が必要です。

今回ご紹介したどの税制も、要件が複雑かつ専門的な実務対応を要しますので、適用を検討される際にはまずご相談ください。

(社員税理士 内田裕二 『月刊 アップ長崎』2017年4月号より』)