8月に入り、暑い日が続きますね。長崎で8月の行事といえば、お盆の精霊流しがあります。全国的には、さだまさし氏の歌によってか厳かなイメージがあるようですが、実際の精霊流しは街中が爆竹の音に包まれる騒々しいイベントです。中国の春節にも似ており、江戸時代に日本で事実上唯一の国際都市だった長崎が、中国の影響を大きく受けていることを実感します。

予測不能・激変の世、「復元力」を備えた組織に

6月23日にイギリスで行われた国民投票でEU離脱派が勝利した旨が報じられました。事前に勢力が拮抗しているというニュースはあったものの、離脱派の勝利が現実となったことに驚きを禁じえませんでした。
そもそもEUは、二度の世界大戦を経験した欧州が、国家間の経済的な結びつきや人的な交流を進めることで、相互理解と相互依存を深めて戦争を抑止するための組織でした。この目的はある程度は達成され、欧州は
平和を保ったまま冷戦を乗り越え、EUは2012年にノーベル平和賞を受賞しています。EUは世界平和を実現するための一つのモデルケースとして評価されていたことでしょうし、人々が国家の垣根を越えて交流し平和に共存する理想的な体制のイメージがありました。
しかし現実には、英国のみならず他のEU加盟国でも、EUからの離脱派が勢力を増しているそうです。その背景にはEU全体と加盟各国の利益の衝突、加盟国間の力関係や経済格差、広がる貧富の差、そして難民の流入による治安悪化や雇用の奪い合いといったことがあるようで、EUの理想を実現するには、まだまだ多くの問題を乗り越える必要がありそうです。

理想を掲げ素晴らしい未来を目指していたはずなのに、想定外の事態によって思うように進まないことはよくあるものです。
例えば、ソ連が崩壊し冷戦が終わったとき、これで世界は平和になるものと多くの人が期待しましたが、実際には、予測不能・激変の世、「復元力」を備えた組織に米ソ両大国の抑えが効かなくなったために世界中で紛争が起こりました。また、経済のグローバル化が進むことで世界が豊かになるかと思ったら、貧富の差が拡大してIS(イスラム国)のようなテロリズムが世界を席巻し、一方で多国籍企業は世界を股にかけた租税回避に勤しんでいます。そして、技術進歩によって豊かで便利な未来が待っていると思っていたら、労働者の半分はロボットやAIに仕事を奪われて失業することになりそうです。
世の中は、理想通りに進まないことばかりですね。

そのような世の中で、多くの組織は「上手くいかない場合も想定し、それに備えた体制を作る」ことに主眼を置いています。しかしネットワークの普及によって状況を構成する要素が複雑になり、それら多くの要素が猛スピードで変化するようになったため、これからは「想定し備える」こと自体が非常に困難になるようです。
そのような時代に強さを発揮するのは、精密に作り上げられた「効率的」な組織ではなく、想定外の状況に素早く適応できる「復元力」を持った組織であるともいわれております。本説にご興味を持たれましたら、日経BP社の「TEAM OF TEAMS」という書籍をご参照ください。

ネットワークによって変化の激しい時代になりましたが、一方ではその恩恵で20年も交流のなかった学生時代の友人と連絡が取れることもあります。今は遠方に住んでいる友人も、お盆には帰省するそうで、懐かしい面々で同窓会を開こうと思います。変化の激しい時代にあっても、孔子が仰った「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」という気持ちは、2500年経っても変わらないですね。

(所長税理士・内田佳伯 (『月刊 アップ長崎』2016年8月号所長巻頭言より))