10月の長崎といえば「おくんち」ですね。長崎人の季節感として、おくんちを過ぎたら涼しくなる、といわれます。これから本格的に秋となり、すぐに冬となって年末がやってきます。今年も終わりが見えてきました。

人の多様性が時代変革に耐えうる組織力へ

 11 月にアメリカの大統領選がありますが、ご存じの通りヒラリー・クリントン氏が米国初の女性大統領となる可能性があります。近隣では、韓国の大統領は朴槿恵氏、台湾(中華民国)の総統は蔡英文氏と、いずれもが女性リーダーです。EUの中心であるドイツはアンゲラ・メルケル首相、そのEUからの離脱を決めたイギリスはテリーザ・メイ首相と、こちらも女性です。米国ではゼネラルモータースのメアリー・T・バッラ氏やYouTube のスーザン・ウォシッキー氏など、トップが女性の大企業も少なくありません。いつの間にか世界中に女性リーダーが溢れています。
日本においても東京都知事の小池百合子氏、民進党代表の蓮舫氏など、女性リーダーが増えてきたように感じますが、それでも現在の内閣においては19 人の閣僚のうち女性閣僚は3人に留まります。大きな企業の女性経営者といえば、アパホテルの谷社長やアートコーポレーションの寺田社長くらいでしょうか。企業における女性管理者の割合をみると、欧米が3~4割に対して日本は1 割程度に留まっており、日本はまだまだ女性の社会進出が遅れていると言わざるをえません。

そんな中、日本においても昨年「女性活躍推進法」が成立し、女性の社会進出を国として後押しする方針が明確に
なりました。日本が女性の社会進出に力を入れる背景には、人口減による労働力不足が今後の日本経済の足かせにな
るという懸念があります。この問題の解決策として、移民の受け入れの検討やIT・ロボットの活用などと並んで、女性の活躍の場を拡げることになったわけです。
しかし切っ掛けがどうあれ、男性主導だった企業社会に女性の視点が加わることで変革が生まれ、新しい商品やサービスが生まれる可能性があります。女性管理職比率の高い企業ほど業績も良い、といったデータもあるそうです。

近年、経営のキーワードとしてダイバーシティという言葉がよく出ます。「多様性」という意味の言葉ですが、女性の活用という意味で使われることも多いようです。しかし、女性活用はダイバーシティの一つであって、性別以外にも学歴・年齢・家庭環境・国籍・障がい・LGBTなど多様な背景を持つ多様な人々が活躍できる環境にできてこそ、ダイバーシティを有していると言えるでしょう。このような組織は、多様な視点を持つことができ、それが新たなサービスを生み出します。先述の女性管理職比率と業績との関係は、女性管理職が多いから業績が良いというよりは、女性が活躍できるようなダイバーシティを持つ企業だから業績が良いという理解が適切でしょう。経済学に「組織の中でマイノリティー(少数派)が30%を超えると変革が起こる」という説があるそうです。多様な人を受け入れる組織風土や制度を持つ組織こそが、環境が大きく変わる時代に自らも変革し、生き残ることができるのでしょう。

長崎くんちでは、日本・中国・南蛮のテイストが混じり合った演し物が行われます。このように多様な文化が共存する長崎は、ダイバーシティの町と言えるのではないでしょうか。鎖国政策をもって多様性を拒み250 年の戦乱無き平和を享受してきた徳川幕府が、大きな変化に見舞われた幕末に倒れていった一方で、日本唯一のダイバーシティの町であった長崎が大きな役割を果たしたのは、歴史的な必然だったのかもしれません。

(所長税理士・内田佳伯 『月刊 アップ長崎』2016年10月号 巻頭言より)