本文は、熊本で発生した大地震から1か月余りが経過した時点に執筆しています。犠牲となられた方々や、損害を被られた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

熊本地震からの復興を願い

今回の地震の影響は、直接の被害が無かった会社にも及びます。
大きな影響の一つとしては、安倍首相が来年4 月に予定していた消費税の10%への引き上げの延期を検討していることが挙げられます。(本文の作成時点では未確定ですが、冊子として皆様のお手元に届く頃には結論が出ていることでしょう。)もともと選挙を控えた時期ですので、国民の反発が予想される消費税増税を先送りしたかったのでしょうが、景気の減速に加えて熊本・大分の地震という大義名分ができたため、この機会に増税見送りの方針を打ち出したものと思います。個人的には、
パナマ文書によって一部の企業や富裕層が税逃れをしていることが明らかになったことも、増税にはタイミングが悪いという判断に繋がったのではないかと思っています。
また、今後予想される影響として建築コストが高騰するのではないか、と考えます。東日本大震災からの復興と東京オリンピックに向けての再開発で、以前から建築コストは人件費を中心に高止まりしていました。ここに熊本・大分の震災復興が重なることで、さらなる高騰が予想されます。今後、建造物の新築や改築を伴う投資を予定されている場合は、投資計画の見直しが必要になるかもしれません。

先述のパナマ文書によって、いわゆる「租税回避地(タックスヘイブン)」を利用した租税回避が話題となっています。とはいえ、日本ではマスコミでの取り上げられ方が比較的小さいように感じます。国別でのタックスヘイブンとの取引規模は日本が世界で第二位、との報道もあり、本来はもっと大きく取り上げられるべきニュースではないかと思います。
マスコミや政府がこの問題に及び腰である理由はさておいて、タックスヘイブンの存在や、これを利用した租税回避については、以前よりよく知られたものでした。
ただ、国境を股にかけて節税するという話が現実味を感じさせないためか、あまり話題になることはありませんでした。一応、税務当局は問題意識を持っていたようで、近年は国際取引に対する税制の整備を進めていましたが、事は国家間の主権に関わる問題であり、世界規模での包括的な課税ルールの整備が進んでいませんでした。
今回、パナマ文書によってタックスヘイブンによる租税回避が巨額であることや、具体的な個人名・企業名が明らかになったことで、世界的に国際課税のルール整備が必要との機運が高まっています。千載一遇のチャンスだと思いますので、日本でサミットが開かれるこの機会に、ルール整備がスタートすることを期待します。

熊本県・大分県を中心として未だに頻発する余震と思われる地震が、被災者の皆様の避難生活を長引かせ復興の妨げとなっています。一刻も早く余震が終息し、被災地がかつての元気な姿を取り戻すことができますよう、お祈り申し上げます。

(所長税理士・内田佳伯 『月刊 アップ長崎』2016年6月号巻頭言より)