余寒の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。
この冬は暖冬と言われておりましたが、1月には長崎県観測史上の記録を更新する降雪がありました。自然は時として予測不可能な猛威を振るうものと、改めて感じさせられました。

安いものには理由(わけ)がある

さて、平成28年に入ってすぐ、気に掛かる大きなニュースが続いています。芸能界関係についても大々的に取り上げられていますが、それ以外にも気になるニュースが続け様に二つありました。一つは「長野県のスキーバス事故」、もう一つは「廃棄食品の転売問題」です。
まずスキーバス事故については、本稿執筆時点では直接的な原因が判明しておりませんが、間接的な原因としては使用ルートが高速道路から急峻な碓氷峠へ変更されていたことが挙げられており、その変更理由は高速道路の通行料を予定額以内に抑えるためだったとも推測されています。バス会社が旅行会社から請け負った金額が不当に安かった事情も併せて考えると、行き過ぎた低価格競争が事故の遠因となったように思います。
続いて廃棄食品の転売問題については、関係者が目先の利益追求欲に溺れ、法令と商道徳に反したことによるのは明らかです。しかし、これだけ大量にしかも多種多様な廃棄食品を転売していたとなると、店頭に並ぶまでに関わった他の業者は本当に気付かなかったのか、今回の件とは直接的には関係のない他の業者でも同様の問題があるのではないか、といったような疑念が生じてしまいます。これらのニュース報道では、共通して「安いものには理由がある、と疑うことが必要」という注意喚起がみられました。商品やサービスがビジネスとして提供されている以上、必ず利益が出ているはずです。利益を確保しつつ価格を抑えるには、どこかでコストダウンが必要です。
経営の効率化や新技術の導入によって、質の低下を伴うことなく低価格を実現できることもありますが、通常は何かを犠牲にしてコストを削減しているケースが多いと思います。何を犠牲にした低価格なのか、即ち「安い理由」がハッキリしていれば、その理由と価格のバランスの中で消費者は自分に合った商品を選べばよいことです。
しかし、格安スキーツアーでも格安の食料品でもそうなのでしょうが、多くの場合は低価格で提供できる理由が示されていません。そのため、消費者はそれらの内情を知らないままに、それら何らかの問題がある商品を購入している可能性もあります。もし安全性に問題があるとわかっていれば、大抵の消費者は安くても購入しない判断をすることでしょう。
外国では、価格に応じて商品やサービスの品質レベルが差別化されているので(特にサービス)、外国人は「料金が安いと安いなりの品質しかない」と割り切っているように思います。それに対して日本では、安くても一定の品質を保っていることが多いように思います。日本人の真面目な性格ゆえかとは思いますが、そのために日本人は低価格の商品・サービスに対しての警戒感が薄いように感じます。
しかし最近では、価格競争が過激化した結果、最低限の品質をも下回る商品やサービスも出回るようになってきたように思います。商品やサービスを選ぶ際には価格の安さだけでなく、その安さの理由と、それを自分が許容できるものかどうかも併せて考える必要がありそうです。

まだ寒い日が続きますので、皆様におかれましても体調にお気をつけてお過ごしください。

(所長税理士・内田佳伯 『月刊 アップ長崎』2016年2月号巻頭言より)