国税局・税務署の最も主要となる業務、それはやはり「税務調査」です。公務員の人員削減が叫ばれる中、税務当局は内部事務の人員は削減されても、唯一の徴税官庁(社会保険庁との統合が議論された時期はありましたが)を旗印に調査官と調査件数の減少を防ごうと懸命です。
国税組織はその運営上、調査先ごとにその投下日数や調査内容を詳細に記録・管理しており、具体的には大きく以下のように区分されています。

①準備調査、②実地調査、③金融機関調査、④反面調査、⑤資料収集、⑥事績整理

 ①~③と⑥は読んで字の如く、その内容は皆様も想像がつくことでしょう。⑤は調査の過程で得た情報を取引先の資料として蓄積することをいいます。例えば酒類販売業の売上であれば納品先の飲食業者では仕入、逆に支払であれば取引先は売上となります。収集された情報は、以後の税務調査先の選定や実際の税務調査時に活用されます。

 今回は先述④の「反面調査」について少し詳しく述べてみたいと思います。
 税務調査で最も指摘が多いのは売上や雑収入の除外です。「売上が現金で少額だったから」、「相手から領収書は要らないと言われたから」、「社員との懇親会で使ってしまったから」等々、所得隠しといった悪意はないまでも僅かな金額だから大丈夫だろうと考えてしまうことがあるかもしれません。
 しかし、取引には必ず相手がいます。先述⑤でも触れましたが、自社の売上⇔相手の経費(又は消費)、自社の経費⇔相手の売上という双方向の関係があります。こちらがお金を受け取る場合(=売上)、相手は経費にするため帳簿にこちらの所在地や名称を記入します。そうでなければ税務当局から架空経費を疑われかねないからです。
 基本的には、調査先に保存されている帳簿や原始証憑を確認しながら税務調査は進められますが、資料の保存が不十分だったり、保存されていても記載内容に疑問があったりすれば、調査官は取引先にも内容を確認することができます(※参照:「質問検査権」)。これが「反面調査」と呼ばれるもので、これにより不正処理が明るみになるケースが時折見受けられます。これは、取引先との税務処理の利害関係が相反するため、真実の取引内容を説明せざるを得ない状況に追い込まれるからに他なりません(まれに取引先と通謀して双方が売上仕入を除外することがあるようですが、バレたら痛い目に遭います!)。場合によっては、既に取引金額を把握された上で調査に来られることもあります。

 税務当局は日々情報を蓄積しています。時には事前に客を装い買い物をして情報を収集することもあります。無用な反面調査をされて取引先の信用を失ったり、業界や関係者に良くない風評が流れたりしたら大損失です。少額でも日々の帳簿の適切な処理と、整然とした資料の保存をお願いします。

※  国税局・税務署の調査官には、所得税法や法人税法により納税者以外にも取引先や従業員に対しても質問調査を行うことができる「質問検査権」が認められています。

(税理士・内田尚生(税務相談室室長) 『月刊 アップ長崎』2015年7月号より)