弊社は税理士事務所ですので、業務の重要な一つに「節税」がありますが、今回は「節税の方法」ではなく、経営者の方に、節税を考える際に心がけて頂きたいことをお伝え致します。

 

1.何のための節税か?

 税金を必要以上に納めたいという人はいないでしょう。税務署職員の方も住宅ローン控除や扶養控除は活用しますし、ふるさと納税だって行います。誰でもできるだけ納める税金を抑えたいものです。

 では何のために節税をするのでしょうか? それは、「お金を手許に残すため」でしょう。経営者であれば、せっかく汗水流して稼いだお金ですから、税金という資金流出をできるだけ抑えて、資金を内部に留保しておくために節税を考えていると思います。この節税の目的意識をしっかり持っておくことが必要です。つい手許資金の状況を忘れて、「節税」に偏重しようとするケースは少なくありません。あくまでも節税は資金繰り改善の手段です。

 

2.節税=支出=一時的なお金の減少

 税金を減らすためには、①経費を増やす、②税制を活用する(税額控除など)の2つの方法があります。①は、何かを買うということですから、当然にお金が出て行きます。②も、大体はモノやヒトへの投資をした場合に特典として付与されます。つまり、「節税するためには、一時的にお金が出ていく(物品・サービスなどに変わる)」ということを理解しておくことも必要です。(手許資金が出て行かない節税方法もありますが、限定的な場合です。)

 

3.節税には利益と十分なお金が必要

 節税を行うためには、利益が必要です。

その理由は、もちろん利益が出ていなければ所得に係る課税がないのですから、節税するためには利益があることが前提です。

もう一つの理由は資金繰りの問題です。経営を続けていくためには、何よりもまず「十分な運転資金を持っておくこと」が重要です。お金がなければ経営はできません。上記2の通り「節税=資金減」ですから、節税によって税金が減ったとしても、それ以上に資金が減って、今の経営を圧迫しては本末転倒です。前述しましたように、「何のための節税か?」を忘れてはいけません。

まずは、企業に節税によって支出があっても問題にならない資金力が必要です。そして、経営の常識ですが、お金を増やすには利益を出さなければなりません。

もし何年も利益が出ていなければ、おそらく現在の資金繰りが厳しい、あるいはある程度資金はあるものの設備投資が難しい状況でしょう。このような場合は、利益が短期的に出たとしても、今期に無理に節税するより少し税金を払ってでも今の資金を増やしておく方が、安心して経営に集中できると思います。

 税理士業界では、よく「顧問先から『節税対策を十分にしてもらっていない』『○○の業者からこうすれば税金が減るという情報を聞いたのに、うちは使ってもらっていない』と言われる。そうは言うけど、節税するにも資金状態が厳しい状況なのに・・・」といった話を耳にします。経営者にも税理士にもそれぞれ言い分があるにせよ、手許資金を枯渇させてまで節税に取り組みたい経営者はいないと思います。財務・資金繰りを考えない節税の追求は経営自体を危うくします。

 

 「何のために節税をするのか?」を念頭に置いて、財務・資金繰りの手段としての節税をお考え頂きたいと思います。

(社員税理士・内田裕二 『月刊 アップ長崎』2016年10月号より)