日本の企業の99%以上は、中小企業が占めています。その中小企業経営者の高齢化が進んでおり、今後10年の間に平均引退年齢である70歳を迎える方は245万人になるものと推計されているにもかかわらず、その半数以上の方々が事業承継の準備を終えることができていないという実情があります。これを踏まえ、平成21年度税制改正で創設された「事業承継税制」が、今回抜本的に拡充されました。

そもそも事業承継税制とは、国に申請をして認定を受ければ、経営者が保有している会社の株式を生前贈与や相続で後継者へ渡す際に掛かる税金を、一定の要件のもと猶予し、その後一定期間保有すれば免除する、という制度です。優良な会社が、多額の納税のせいで安定した経営ができなくなり、廃業を余儀なくされてしまうことのないように創設されました。
しかし、今まで数回改正が行われたにもかかわらず、適用要件が厳しく使い勝手が悪かったため、ほんの一部の方のみの利用に留まっていました。今回の改正では、適用要件のハードルが下がったことにより、利用者が大幅に増加することが見込まれています。

改正点については、以下の表をご覧ください!

【現行・特例制度の比較】

 

現行制度(改正前)

特例制度(改正後)☆

 

納税猶予対象株式

発行済議決権株式総数の2/3に達するまでの株式

取得した全ての株式

 

納税猶予税額

・贈与の場合:納税猶予対象株式に係る贈与税の全額

・贈与の場合:納税猶予対象株式に係る贈与税の全額

 

・相続の場合:納税猶予対象株式に係る相続税の80%

・相続の場合:納税猶予対象株式に係る相続税の全額

 

雇用確保要件

経営承継期間内の一定基準日における雇用の平均が「贈与時または相続時の雇用の8割」を下回った場合には、納税猶予は打ち切られ、猶予税額の全額を納付

経営承継期間内の一定の基準日における雇用の平均が「贈与時または相続時の雇用の8割」を下回ったとしても、当該要件を満たせない理由を記載した書類(税理士等の認定機関作成)を都道府県へ提出すれば納税猶予は継続

5年間の雇用平均8割維持要件の大幅緩和(専門家の中には実質撤廃と言う方も!)。

 
 
 
 

先代経営者の要件

納税猶予対象株式代表権を有するまたは有していた

 

 

複数人(代表者以外の者を含む)からの特例後継者への承継も適用対象

 

 

 

先代経営者1人から、株式を承継する場合のみ適用対象

 

後継者の要件

代表権を有しているまたは代表権を有する見込みである

 
代表権を有する複数人(最大3人)への承継も適用対象(ただし株式10%以上保有等の要件あり)

 

 

後継者1人への承継のみ適用対象

 

猶予期限の確定事由(譲渡・合併・解散等)に該当した場合の納付税額

株式の贈与時・相続時の相続税評価額を基に計算した納付税額

 
一定の要件を満たす場合には、株式の譲渡若しくは合併の対価の額または解散の時における相続税評価額を基に、納付金額を再計算し、当該納付金額が当初の納税猶予税額を下回る場合、差額を免除

 

 
 
 
 

相続時精算課税制度の適用対象者

贈与者は60歳以上の父母または祖父母、受贈者は20歳以上の子または孫などの贈与者の直系卑属

 
贈与者(60歳以上)の推定相続人以外の者(20歳以上)の特例後継者も適用対象
贈与者の子や孫でない場合でも適用可能

 

 
 
 

 

上表の「現行制度(改正前)」と「特例制度(改正後)」とを見比べてみると、多くの中小企業にとってこの制度が利用しやすくなるよう、要件の緩和が行われていることがわかります。
この新事業承継税制は、平成30年1月1日から39年12月31日までの間の贈与・相続で取得する株式について適用となりますが、そのためにはまず、30年4月1日から35年3月31日までの間に、「特例承認計画」を都道府県に提出する必要があります。複雑な要件やデメリットもありますし、全ての会社にとって最適な制度かというとそうではありませんので、まずは現状を認識し、自社にとって最適な事業承継スキーム(計画・手順)を検討することが必要だと思います。
幣社では既に多くのお問い合わせを頂いている状況です。この制度を利用「する・しない」にかかわらず、事業承継をお考えの経営者様は、是非一般社団法人昇継までご連絡下さい。 

(長崎オフィス 業務部・一般社団法人 昇継
M&Aシニアエキスパート・相続診断士 平井 健太朗
『月刊 アップ長崎』2018年5月号より)