朝晩は随分涼しく感じる時期になりましたが、皆様お変わりないでしょうか。
年末に向けて債権の整理を行い、長期間の未回収に頭を悩ませている経営者も多いことでしょう。債権の回収ができないだけでも大きな損害ですが、これが税務上の貸倒れとして認められなければ二重の痛手となります。貸倒れは個別の事実認定が重要です。恣意的な計上は利益操作に繋がるため、要件が法人税法基本通達で細かく定められています。以下、この貸倒れの要件についてご説明します。

1、法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

会社更生法や民事再生法等により金銭債権が法的に切り捨てられた場合、切り捨てられることとなった金額はその事実が発生した日の属する事業年度の損金として認められます。
問題となるのは、債務者の債務超過が相当期間継続したため、債権者が回収不能と判断し、書面で債務免除を通知した場合です。形式的には債務免除を通知した日の処理になるのですが、長期間督促もせず債権を放置していたような場合、実質的には相当以前に貸倒れの事実が生じていたと
みなされ、債権放棄の時期を意図的に操作することで利益調整を計ったとの指摘を受けるリスクがあります。
従って、債権放棄を通知するまでの間は定期的に督促等を行い、その内容をできるだけ詳細に記録しておき、債権管理していた事実を証明できるようにしておくことが重要です。
また、当該債権放棄が寄附金と認定課税されないためには、やむを得ず行われること(必要性)と、相当な理由があること(相当性)が必要です。

2、事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)… 回収不能の貸倒れ

法律上は債権が存在していても、債務者の資産状況や支払能力等から当該債権価値が経済的に無価値となり、その全額が回収できないと認められる場合、損金処理を条件に貸倒れが認められます(一部の貸倒れ見込は不可)。なお、担保物がある場合はこれを処分した後でなければ損金経理はできません。
「債権の全額が回収不能であること」の判断について、最高裁判所(平成16.12.24)は、「債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損
失といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきもの」としています。債務者側の財務状況の情報が不可欠であり、実務上の適用はハードルが高いものと思われます。

3、形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)… 一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ

法律上債権として存続しており、必ずしも経済的価値がなくなったものとは言えないものであっても、一定期間取引がない場合等、形式的な事由による貸倒損失の計上を認めています。例えば、次のような事実が発生した場合です。

①債務者との最後の取引(支払)のうち最も遅い日以後1年以上経過した場合(継続的取引が前提、不動産取引のように単発・偶発的な売掛債権は対象外)
②同一地域の債務者に有する債権総額が取立てに要する旅費その他費用に満たず、支払を督促しても弁済がない場合

注意点ですが、この規定は売掛債権に限定されており、貸付金や立替金等の主たる営業活動上の債権に該当しないものは除かれます。また、帳簿での費用計上が必要で、備忘価額(1 円)を残額としなければなりません。

(税理士・税務相談室室長 内田尚生『月刊 アップ長崎』2017年10月号より)