登場人物 A:会社社長 B:顧問税理士

A:相続税の調査で、「贈与が成立していない」との指摘を受けることがあるそうですが、どういうことですか。

B:贈与が成立していないと、税務上亡くなった方の財産額が増加し、相続税額も増加することとなります。以前(2015年6月号参照)少しお話しましたが、財産の名義と誰の財産かは必ずしも一致しないのです。

A:なるほどでは、その贈与の否認を受けないためにはどのような点に注意をすればいいのですか。

B:はじめに、贈与の定義からお話ししましょう。贈与は、民法549条において「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と規定されています。つまり、贈与が成立するためには、双方の意思の合致が必要となります。当然、財産を贈与した人(贈与者)だけでなく、もらった人(受贈者)もその事実を認識していなければなりません。

A:そうすると、例えば現金(預金)を贈与する場合は、どのような点に注意すればいいのですか。

B:ポイントは、贈与という事実をいかに立証するか(証拠を残すか)という点です。
まず、実際に現金の授受が行われたという事実は、口座の記帳状況や贈与証書等(授受及び双方の
意思を証する書類)などによって証拠を残すことができるでしょう。
次に、その現金を本当に受贈者がもらったものであれば、これを自分で管理(・支配)しているはずですから、その受け入れた預金通帳や印鑑の管理、実際の口座の入出金の履歴等々により、実体としてもこれが受贈者のものであるという事実を証明する必要もあるのです。

A:なるほど。

(続く)

(税理士・田上孝博(税務相談室主査)『月刊 アップ長崎』2016年9月号より)