今回は、平成29年4月1日施行の「所得税法等の一部を改正する法律」及び昨年12月の「平成29年度税制改正大綱」を中心に、消費課税及び資産課税関連事項のうち、主要な項目についてお伝え致します。

 

消費課税

ご存知の通り、平成28年11月18日、消費税率の引き上げ時期が、平成29年4月1日から平成31年10月1日へ先延ばしされることが決定しました。これに伴い、昨年の6月号でお伝えした軽減税率制度やいわゆる「インボイス制度」の導入なども延期されることとなっています。
したがって、今年度の消費課税関係の改正はあまり大きなものはありませんでしたが、トピックス的なものを2点ご紹介します。

1.仮想通貨に係る課税関係の見直し(消費税)

既に新聞等で財務省などの方針が報道されたところではありましたが、いわゆるビットコインの譲渡については、平成29年7月1日以後に行われる取引について、消費税を非課税とすることとなりました。

2.税率構造の見直し(酒税)

平成28年度税制改正大綱の検討事項にも挙げられていた項目でしたが、今回の改正により、平成32年10月1日から、ビール系飲料を中心に、酒税の税率構造の見直しが行われることとなりました。但し、平成35年10月1日までは、その税率等につき2段階の経過措置があります。

 

資産課税

1.取引所の相場のない株式の評価の見直し

  取引所の相場のない株式については、「相続税法の時価主義の下、より実態に即した評価」をとの方針から、類似業種比準方式等について、見直しが行われます。
  具体的には、①類似業種の株価について、課税時期以前2年間平均の追加、②配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、現行の1:3:1から1:1:1へ見直し、③評価会社の規模区分の金額等基準の見直しなどがあります。
  このうち、特に②については、好業績企業の負担軽減が想定され、「全体では10%程度の評価減になる」(税理士界2月15日号より)と試算されていますが、(純資産価額が大きな場合や、恒常的に配当を出しているような場合など)会社の状況によっては、逆に評価が上がることもあるため、注意が必要になると思われます。

2.医療法人の持分放棄があった場合の贈与税の課税の特例の創設他

  これまでは、持分ありの医療法人でその持分の放棄が行われた場合、ほとんどのケースで法人に対して贈与税が課されていました。
  今回の改正においては、これが、「移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより当該医療法人がその認定移行計画に記載された移行期限までに持分の定めのない医療法人への移行をした場合には、当該医療法人が当該放棄により受けた経済的利益」については、贈与税が非課税とされました。簡単に言うと、役員数、役員の親族要件、医療計画への記載等の要件が緩和され、贈与税の非課税対象が大幅に拡大されたということです。
ただし、移行日以後6年以内に認定要件に該当しない場合には、贈与税の課税対象となります。
  又、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限も3年延長されています。

(図表:持分なし医療法人への移行計画への認定制度について―厚生労働省)

3.その他

  上記以外についても、例えば以下のような改正が行われています。
  ①国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し
  ②事業承継税制の見直し(災害等の場合の措置、雇用確保要件等の緩和など)
  ③土地の財産評価の適正化(広大地の評価方法など)
  ④居住用超高層建築物の固定資産税など(相続税等は改正なし)

以上、消費課税及び資産課税の主な改正点についてご説明して参りました。ただ、各制度の詳細についてはこれから決定されていくものも多く、引き続き今後の動向を注視していく必要がありそうです。

(税理士・田上孝博(税務相談室主査)『月刊 アップ長崎』2017年5月号より)