皆さん、こんにちは!
昨年もお伝えしましたが、税務当局の異動は7 月です。
個人事業は1 ~ 12 月、法人は事業年度の一年間が活動の一期間になります。税務署は7~翌年6 月がこれに当たり、これから一年間のスタートとして税務調査が始まります。
税務当局がどのような視点で調査対象を選定しているのか、皆さんも気になるところではないでしょうか。
今回は税務当局に27 年間勤務した経験から、その内容を簡単にご紹介します。

1. 不正に直結する資料情報

税務署は様々な情報を収集、蓄積しています。税務
調査から取引先の不正が明るみに出たり、投書から
不正が想定されたりして、調査に選定されることもよく
あります。税務調査を察知され資料を破棄される恐れ
がある場合は情報が入り直ぐに調査されますが、情
報源を察知されそうな場合は情報源への配慮から
一定の時間を置いての調査になることもあります。

2. 5 期比率分析、同業社比較

選定の最も基本となる事項です。
決算内容は全てKSK(国税総合管理)システムに登録
され、異常数値は機械が点数化します。一定の点数
以上は粗選定対象となり、その後管理者等の判断で
調査対象が絞られます。
具体的には原価率、人件費率、外注比率、経常利
益率、従業員1人当たりの売上等が重点科目です。
多額の役員借入(貸付)金も着目されます。また同
規模同業者との比較も点数化されます。突発的な
事由により異常数値が生じた場合は概況書等に理由
を簡記した方がよいでしょう。

3. 売上急増、事業規模拡大

国税庁のホームページでも公表されていますが、申告
している法人の内、黒字は約30%です。多額の納税
が発生しそうな時に経営者は資金流出を抑えるため
に対策を考えますが、これが節税を超えて脱税になっ
てはいけません。売上が急増したり、事業規模が拡大
したりしている時は要注意、より適切な税務処理が
必要ということです。

4. 前回調査で不正、事実解明が不十分

税務調査記録は7年保管されています。前回調査での
指摘事項が是正されているか、事実解明が不十分
だった場合は担当者が「○年後要調査」と記録化する
場合もあります。

5. 探聞情報

新聞、雑誌、広告、風評等も情報として収集蓄積され
ています。個人的には芸能人等の豪奢な自宅や自家
用車などの生活状況が放送されているのをたまに
目にしますが、よくやるな~と思っています。

6. 重点業種

当時の社会情勢や地域性を考慮して、特定の業種を
重点的に調査します。共通の不正手口や情報があ
れば署員で共有し効率的に調査を行います。
数年前なら金属が高騰した時期はスクラップ業者、
過払返還が騒がれた時期は司法書士がターゲットに
されました。近年は富裕層、海外取引、ICT関連、長崎
なら客船関連、昨年の国体、世界遺産登録により観光
関連業等が着目されそうです。

7. 連携事案、情報収集

他の調査事案に関連して取引先を調査しなければ
実態が解明できない場合や、真のターゲットである
取引先の情報を収集する場合があります。
また、広く取引先の情報収集が目的の場合(飲食店
なら食品卸業、宿泊施設ならリネンサプライ業等)も
あります。

8. 長期未接触

一般的に税務調査は不正がなければ3年(不正あり
なら最長7年)遡及して調査を受けます。周期として
は概ね5年が一つの目安と言われますが、3年おきに
調査に来られたところもあれば、開業以来一度も調査
を受けていないところもあるでしょう。先述のように
特段の理由がなくとも、一度は覗かせてもらおうと
いうことで調査になることもあります。

色々と述べてきましたが、先述の事由は税務調査選定の優先順位とほぼ同じです。意図的に不正な行為がなければ必要以上に恐れることもないのですが、とは言えやはり税務調査は精神的にも時間的にも相当の負担を強いられます。

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(税理士・内田尚生(税務相談室室長)『月刊 アップ長崎』2016年7月号より)