【明けましておめでとうございます。】

  日本の慣習や風潮とでも申しましょうか、大晦日から元旦にかけては生活環境に大きな変化が生じます。何より年末の物々しさから、元旦を境に正月の凛とした賑わいとなり気持ちが刷新されていくような感が致します。そして年の初めには、初詣や縁起もののおせち料理を食べ、良い一年であるようにと願います。また、今年一年間の抱負を語る方もいらっしゃることと思います。しかし私の経験上お恥ずかしながら、一年が経過してその抱負が結果どうであったかを検証することはありませんでした。皆様はいかがでしょうか?

 もちろん毎年初に抱負を描き、一年間その抱負にチャレンジし年末に振り返り、それを元に次の新年の抱負を考える…そのようにされている方も多くいらっしゃることと思います。私も今年こそは抱負を明らかにし、一年間の実行・検証を経て、また翌年のさらなる目標につなげていくようにしたいと考えております。

【報酬改定に適応しうるスピード改革を】

 さて、2015年4月の介護保険報酬・障害者サービス費報酬改定後の決算を今年3月に迎える、社会福祉法人様やサービス事業者(法人)様は多数あられることと思います。昨年のPartner夏号では報酬改定の影響について言及いたしましたが、ここまで振り返ってみた時に、皆様の事業所では改定後9か月間の運営実績の結果はいかがでしたでしょうか。厳しいながらも現場の皆様と力を合わせ何とか頑張ってこられたからこそ、良い新年を迎えられていることと思われます。しかし、昨年は残念ながらデイサービス事業所の廃業についてのお話をよく耳にしました。実際に「東京商工リサーチ調べ」の下表2015年1~4月の31件(①)と1~9月の57件(②)を比較しても、5月以降に26件(②57件-①31件)の倒産が読み取れます。

 

 

 

 

 

 

 年の初めから縁起でもないお話で申し訳ございませんが、注目していただきたいのは、実は1~4月の倒産件数31件です。これには、原因が少なくとも2つはあるものと思われます。まず第一には、経営状況の悪化・資金難です。そして第二には、介護保険報酬の改定が2014年末に公表されて以降、早々と経営方針を転換した事業所が廃業に踏み切ったことではないでしょうか。ある記事は、福岡県では2015年1~3月でデイサービスの廃止届が21件あったということが掲載されています。その廃業した事業所すべてが当てはまるということではないのでしょうが、経営方針を転換した事業所の中には、事業形態を変更して運営しているケースもあると思われます。

 このような事例をご紹介した趣旨は、計画倒産をお勧めすることではなく迅速な経営判断の重要性をお伝えすることです。たとえ現在は運営が逼迫していない状況であるとしても、いち早く報酬改定の意図するところを読み解き、それが経営にどれほどの影響を及ぼすかを掴んでおくことが大切です。そして、現実問題として収入単価が減少する危険が見込まれるのであれば、単価の高い要介護度の利用者層を獲得するための、または利用者数を増加させるための営業方法の検討など、戦術を立てなければなりません。もしも収入回復について先の見通しがつかないのであれば、抜本的な改善策が必要です。

【行政機関の基本方針から中期経営計画を見出そう】

 ご存知の通り、老人介護サービスや障害者サービスについては、3年に1回の報酬改定があります。その根拠としましては、厚生労働省や各行政機関から発表される事業計画です。ところが、この計画に沿った事業計画と収支予算(資金計画)を3年ごとに作成されている事業所様は実のところそれほど多くはありません。また社会福祉法人にあっては、年度末に翌年1年間の計画こそ作成するものの、新規事業や施設整備時以外で3年間の計画を立てている法人様は私の知る限り少ないです。もちろん1年間の計画が不要というわけではございません。が、行政の求めに応じて義務的に作成されただけの計画では、事業計画とは言い難いと思います。

 老人福祉・介護保険第6期計画(2015年度~2017年度)について、皆様の介護サービス事業所ではどのような方針をもって取り組んでいらっしゃいますでしょうか。もし方針またはその実施を模索中ということであれば、各行政機関が打ち出している基本方針と計画とをヒントに、事業者自らができる方針をそうした機関と協議をしながら推進させていくのも一手でしょう。たとえば長崎市では、介護保険事業の運営にあたっての基本方針として、以下の5点を列挙しています。

≪長崎市・介護保険事業の基本方針≫

 ⑴地域包括ケアシステムの構築
 ⑵介護予防の推進
 ⑶権利擁護の推進
 ⑷地域における支援体制の整備
 ⑸サービスの質の確保・向上

せっかく各サービスの方向性を行政が示しているのですから、これを利用しない手はないと考えます。

【中期経営計画作成に当たって】

 話を事業計画に戻しましょう。中期経営計画といえば通常、5年間の事業・資金計画を指します。今次計画の残り2年間(2016年度~2017年度)と次期計画(2018年度~2020年度)の3年間を合わせてちょうど5年間です。中期経営計画を作成するにあたりましては、おもに以下の点について検討しておく必要があるでしょう。

≪中期経営計画作成上の要検討事項≫

・現在の利用者のうち何人が5年後も今のサービスを利用しているものと見込まれるか。
・新たな利用者獲得にはどういった営業をすべきか。
・職員の退職・採用をどのように予定しているか。
・消費税が8%から10%に上がることでコスト増大が考えられるが、それに耐えうる事業運営の状況か。
・車両運搬具や器具備品等の固定資産の入れ換えについて、向こう5年間の見通しは立っているか。

 このような内外環境の変化に順応しつつ、5年間(又は3年間)での事業計画と収支予算(資金計画)について作成し、冒頭にて言及した「年初の抱負」のごとく、年度ごとに計画・実施とその検証をすることが必要不可欠です。新たな一年の始まりに、その先の5年間(または3年間)について計画を立ててみてはいかがでしょうか。

(医療介護課課長・入江暢博 福祉グループ会報誌『Partner』2016年新春号より)